医療・介護の売上予測では、患者数や利用者数、稼働率、単価等が重要な変数になります。

しかし、診療報酬・介護報酬のような制度報酬型事業では、それだけでは将来売上を十分に捉えられません。

予定していた患者数や利用者数が確保できても、その報酬を算定するための制度要件を満たせなくなれば、想定していた収益を継続できない場合があるからです。

将来も算定要件を満たし続けられるか。

制度報酬型事業では、この視点を売上予測に組み込む必要があります。

制度報酬の売上予測には
「算定を続けられるか」が入っている

診療報酬・介護報酬では、人員配置、資格、体制、実績、アウトカム、届出、データ提出等、さまざまな制度要件が報酬算定に関係します。

将来売上を考えるときは、患者数、利用者数、単価だけでなく、その報酬を算定するための条件を将来も維持できるかを見る必要があります。

現在満たしていても、将来リスクは存在する

現在必要な人員配置を満たしていても、数か月後の退職が確定し、後任採用が決まっていなければ、将来の算定継続にはリスクがあります。

重要なのは、現在のコンプライアンスと、将来の収益継続性を分けて考えることです。

この二つを同じものとして管理すると、実際に要件を下回った後で初めて経営問題として認識することになります。

KPIは現在値だけでは足りない

制度要件管理で現在値だけを見ると、問題が顕在化するまで「正常」に見えることがあります。

そこで、退職予定、休職予定、採用状況、配置可能性、業務量の変化等、将来状態を変化させる要因も確認します。

実績要件であれば、現在の累積値だけでなく、進捗状況や将来見込みを見る必要があります。

KPIやリスク指標は、「今どうなっているか」だけでなく、「将来なぜ変わり得るか」を把握するために設計する必要があります。

制度要件の変化は収益リスクになる

制度要件を満たせなくなった場合、算定不能、減算、報酬区分変更等によって収益へ影響が生じる可能性があります。

そのため、「要件未達の可能性がある」で止めるのではなく、「未達した場合、収益にどのような影響が生じ得るか」まで経営管理へ接続する必要があります。

これにより、人員採用、配置変更、投資、業務改善等について、どの収益をどの程度のリスクから守るための対応なのかを判断しやすくなります。

制度改定も予算管理の問題になる

診療報酬・介護報酬は、制度改定の告示だけで完結するものではありません。通知、訂正、疑義解釈、Q&A、届出様式、経過措置等が追加・変更されることがあります。

制度側の条件が変われば、それまで使用していた管理基準やKPIが適切でなくなる可能性があります。

したがって制度改定は、制度担当者が資料を更新する問題だけでなく、売上予測、予算、KPI、リスク評価を更新する問題でもあります。

公開情報だけでは個別組織の将来は読めない

制度要件や制度改定そのものは公開資料から確認できます。

しかし、個別病院・介護事業者の将来の退職・休職、採用状況、患者・利用者構成、管理策の実効性、是正対応の進捗、維持コスト、内部予測等は、外部から十分に確認できない場合があります。

したがって、公開制度情報だけを見て個別組織の将来収益リスクを断定することはできません。

制度要件を経営会議へ持ち込む

施設基準や算定要件は、制度担当部門だけが管理する事項ではありません。人員、採用、配置、設備、業務、予算等と結びついている以上、その一部は経営判断の対象です。

重要なのは、制度要件をそのまま大量に経営会議へ持ち込むことではありません。

将来の収益継続性に重要な影響を持つ要件について、現在の状態、将来リスク、先行する変化、必要な対応、財務上の影響を経営判断可能な形へ変換することです。

ウェルサイドコンサルティングの研究

ウェルサイドコンサルティングでは、この問題を「制度報酬・算定要件を経営KPIへ変換する管理方法」として研究しています。

制度要件を現在のコンプライアンス確認だけで終わらせず、将来の算定継続可能性、KPI、リスク、管理策、収益・利益への影響、経営判断へ接続する考え方を整理しています。

考え方の論理的一貫性や公開制度資料への適用可能性は確認していますが、実際の医療機関・介護事業者における予測精度、利益改善効果、既存手法に対する優位性を実証したものではありません。

著者

高森 雅人

ウェルサイドコンサルティング 代表/中小企業診断士

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