成果を上げた職員へ報いることは重要ですが、成果の高さだけから報酬額を決めると、企業の利益や資金余力と報酬負担が一致しなくなることがあります。成果をどう評価するかと、企業としてどこまで安全に還元できるかは、分けて考える必要があります。
成果評価と報酬原資は別の問題である
成果連動報酬では、個人やチームの成果を評価し、その結果を報酬へ反映します。
ここで注意が必要なのは、成果評価が高いことと、会社として追加報酬を支払えることは同じではないという点です。
ある職員やチームが高い成果を上げていても、企業全体では利益や資金余力が十分でない場合があります。成果だけを基準に報酬額を増やすと、企業側の支払能力との間にずれが生じます。
そのため、「成果をどう評価するか」と「企業としてどこまで還元できるか」を分けて考える必要があります。
成果が高いほど報酬を増やす仕組みには限界がある
成果連動報酬の目的は、成果を上げた職員へ適切に還元することです。
しかし、その還元が企業の利益や資金を過度に圧迫すれば、制度自体を継続できなくなります。
持続可能な制度にするには、成果に応じた配分を考える前に、企業全体としてどこまでの報酬負担が可能なのかを確認する必要があります。
つまり、成果の高さが報酬総額を無制限に決めるのではなく、企業側が持続できる範囲の中で成果を配分へ反映するという順序が必要になります。
利益だけを見ればよいわけでもない
反対に、会社の利益だけを基準に報酬を決めればよいわけでもありません。
会社全体として利益が出ていても、個人やチームの成果との関係が曖昧であれば、「なぜこの報酬額なのか」を説明しにくくなります。
成果への評価と企業全体の配分可能な範囲には、それぞれ異なる役割があります。
一方だけから報酬額を決めるのではなく、両方を別々に確認したうえで接続する必要があります。
個人成果を強く評価しすぎると別の問題が生じる
成果連動報酬では、測りやすい数字だけが強く評価されることがあります。
例えば、売上や数量を重視しすぎれば、品質、教育、知識共有、他の職員への支援などが弱くなる可能性があります。
また、個人成果を強調しすぎると、チームとして必要な活動が評価されにくくなることがあります。
反対に、チームや組織全体の成果だけを重視しすぎると、個人の努力差が報酬へ十分反映されない場合があります。
個人、チーム、組織のどこをどの程度見るかは、単純な一つの指標では決められません。
企業のリスクを職員へ移しすぎない
企業側の利益や資金状態を報酬へ反映する場合には、別の注意も必要です。
企業の経営リスクを過度に職員の所得変動へ移してしまえば、企業の安全性を確保する代わりに、職員側の負担が大きくなります。
特に、基本給与が適切な水準に達しておらず、変動報酬が不足する給与を補う役割になっている場合には、変動報酬の設計以前に固定報酬を確認する必要があります。
企業の安全性を守ることと、職員へ過度なリスクを負わせないことの両方を考える必要があります。
支払時期も制度設計の一部である
報酬のすべてを直ちに支払うのではなく、一部を将来へ持ち越す考え方もあります。
ただし、支払を遅らせれば安全になるわけではありません。
長期間先送りすれば、職員から見て成果と報酬の関係が分かりにくくなり、制度への納得感を弱める可能性があります。
支払時期についても、企業側の安全性だけではなく、成果と報酬の関係を職員が理解できるかという点を含めて考える必要があります。
制度は作った後も見直す必要がある
報酬制度は、一度作ればそのまま使い続けられるものではありません。
事業構造、利益構造、職員構成、仕事内容、成果の測り方が変われば、制度が当初の目的に合わなくなることがあります。
また、特定の数字だけを良く見せる行動が増えていないか、品質が低下していないか、個人主義が強くなりすぎていないか、管理者による例外的な修正が増えていないかも確認する必要があります。
報酬制度そのものを経営管理の対象として、定期的に見直すことが必要です。
成果と企業の支払余力を分けるSPRS
Wellside Consultingでは、この問題を研究するため、SPRSという経営管理モデルを構築しています。
SPRSでは、まず成果を把握します。その一方で、企業として追加報酬を負担できる利益・資金状態を別に確認します。
そのうえで、企業として持続的に還元できる報酬原資を決め、その範囲内で成果に応じた配分を行います。支払後も、制度が当初の目的どおり機能しているかを見直します。
中心にあるのは、成果は誰へ配分するかを決めるが、企業全体でいくら配分できるかを直接決めるものではない、という考え方です。
詳しい研究内容、適用範囲、現在の研究段階と限界は研究ページで公開します。
SPRSで確認できていることと、確認できていないこと
現在の研究では、SPRSの基本構造について論理上の整合性を確認し、研究用の試作モデルと架空条件を用いて、企業側の利益・資金安全性を保つ方向で仕組みが動くことを確認しています。
一方で、実際の企業への導入によって、生産性が向上する、離職が減る、職員の意欲が高まるといった因果的な効果は確認していません。
したがって、SPRSをこれらの効果が保証された報酬制度として扱うことはできません。
そのため、生産性の向上、離職の減少、モチベーションの向上、すべての組織に共通する最適値、既存モデルより優れているといった主張は行いません。
まとめ
成果連動報酬では、成果をどのように評価するかだけでなく、企業としてどこまで持続的に還元できるかを別に考える必要があります。
そのうえで、企業の安全性を損なわない範囲内で成果を配分へ反映し、制度運用によって品質、公平性、チーム活動、職員側の負担等に問題が生じていないかを継続的に確認します。
成果への還元と企業の持続性を二者択一にせず、一つの経営管理の仕組みとして考えることが重要です。