人口・人材制約を踏まえた介護事業者の中長期経営では、将来需要だけを見るのではなく、必要人材を確保できるか、どのサービス・拠点をどの規模で維持するか、限られた経営資源をどこへ配分するかを一体で考える必要があります。

介護需要が存在しても、必要な人材や管理者を確保できなければ、現在と同じ事業構造を維持できるとは限りません。需要と供給能力の双方を見ながら、持続可能な事業構造へ変えていくことが重要です。

介護需要があるから事業は続くとは限らない

高齢者人口が多い地域であっても、必要職種や管理者を確保できず、提供可能量が縮小すれば、事業として需要を取り込めません。

したがって、介護事業の中長期戦略では、市場需要と自法人の供給能力を分けて確認します。需要があるかどうかと、自法人がその需要へ対応できるかどうかは別の問題です。

人口は需要側と供給側の両方を見る

総人口、高齢者人口、より高齢な年齢層、生産年齢人口、地域差、将来推移を確認します。介護需要を生む人口と、サービス提供人材の母集団が同時に変化する点が重要です。

高齢者人口が増える一方で生産年齢人口が減少する地域では、需要増加と人材確保難が同時に進む可能性があります。この場合、単純な拡大戦略では持続性を確保できない場合があります。

需要はサービスごとに考える

訪問、通所、居住・施設系などでは、需要構造、必要人員、設備、移動、稼働構造が異なります。市場全体の介護需要ではなく、自法人が提供する各サービスの将来需要を見ます。

同じ地域でも、在宅ニーズと施設ニーズでは変化の仕方が異なる可能性があります。サービス別に需要、提供能力、採算、人材制約を確認することが必要です。

人材を戦略上の制約として扱う

人材不足を採用担当の問題だけにせず、必要職種、管理者、定着、拠点配置、将来人材供給等を事業戦略の前提条件として組み込みます。

採用が難しい状態が続く場合、現在の拠点数やサービス構成をそのまま維持すること自体が戦略上のリスクになります。人材確保の可能性を踏まえて、どこへ重点的に人員を配置するかを考えます。

管理者不足も重要な制約になる

現場職員だけでなく、拠点を管理できる人材の確保・育成も事業継続へ影響します。拠点を増やしても、管理機能が追いつかなければ、運営品質や収益管理が不安定になる可能性があります。

現在のサービス・事業所構成を把握する

サービス、拠点、利用、人員、管理者、採算、生産性、地域での役割を整理し、限られた人材・資金が現在どこへ配分されているかを把握します。

単に赤字・黒字を並べるのではなく、各拠点が法人全体の中でどの役割を持ち、どの程度の経営資源を必要としているかを確認します。

すべての事業所を同じように維持する前提を外す

  • 強化
  • 維持
  • 統合
  • 再編
  • 転換
  • 縮小
  • 撤退

戦略は成長だけではなく、経営資源をどこへ配分するかという選択です。すべての事業所を一律に維持する前提に立つと、人材や資金が分散し、重要拠点まで弱くなる可能性があります。

現在の赤字・黒字だけで判断しない

赤字でも立ち上げ、稼働、人員、地域での役割等によって意味が異なります。黒字でも将来需要、人材確保、設備更新等に課題があれば同じ状態を維持できるとは限りません。

現在の損益と将来見通しを分け、継続可能性、改善可能性、戦略上の重要性を併せて判断します。

稼働を単独で評価しない

稼働不足の背景には地域需要、紹介・連携、人員不足、サービス内容、定員構造、運営体制等があります。高稼働でも人員負荷が過大なら持続可能ではありません。

稼働率だけで良否を判断せず、必要人員、収益性、職員負荷、利用者構成との関係を見る必要があります。

将来像は法人の事業構造として考える

どの地域で、どのサービスを、どの規模・人員体制・事業所構成で提供するのかを将来像として整理します。

将来像を定めることで、どの拠点へ人材を重点配置するか、どのサービスへ投資するか、どの事業を再編するかを判断しやすくなります。

重要経営課題を将来像との差から特定する

現在の事業構造と将来の需要・人材環境を確認し、目指す事業構造を定めたうえで、戦略方向、重要経営課題、中長期実行計画へ順に整理します。

重要経営課題には、人材確保、管理者育成、拠点再編、本部機能、収益性改善、サービス転換などが含まれる場合があります。

中長期経営が機能しない典型的な状態

  • 需要予測だけを見て人材制約を織り込んでいない
  • 全拠点を同じように維持する前提で考えている
  • 現在の赤字・黒字だけで将来判断している
  • 管理者不足を経営課題として扱っていない
  • 法人全体の事業構造ではなく拠点単位で判断している

まとめ

持続可能な介護経営とは、現在の形をそのまま守ることではありません。将来の需要、人材、管理能力、収益性を踏まえ、法人全体として持続可能な事業構造へ継続的に変えていくことです。

中長期戦略では、どこで何を続けるかだけでなく、限られた経営資源をどこへ集中し、どの事業構造を目指すのかを明確にする必要があります。

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Author

高森 雅人

Wellside Consulting 代表/中小企業診断士

医療法人豊田会 刈谷豊田総合病院に18年間、事務職として勤務。現在は経営管理を専門として、医療・介護を重点領域に、経営戦略、マネジメント体制、管理会計・経営数値管理に関する研究・コンサルティングを行う。

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