作成する報告書・帳票類で確認したい3つのポイント(医療と介護の経営ブログ#14)

あなたは、自分の医療機関や介護施設において日々作成される報告書や帳票類について考えてみたことはありますか。例えば、組織内にどのような報告書や帳票類が存在しているか想像してみてください。そして、それら一つひとつを作成するためにどの位の時間が費やされているかを想像してみてください。もしかすると、あなたの医療機関や介護施設の貴重な経営資源であるスタッフの時間を浪費させているかもしれません。

それらの時間を利用者のためのサービス向上や収益向上のために費やすことができれば組織の付加価値は高まります。しかし一方で、報告書や帳票類が日常業務や経営戦略において必要であることも確かです。今回は、あなたの医療機関や介護施設で作成されている報告書や帳票類を価値あるものにするために意識したいポイントについてお伝えします。

1.無意味な報告書や帳票類を作成していないか

各部署において作成されている報告書や帳票類の棚卸しを行います。組織内で作成されている書類の棚卸しを行うことで、必要性を評価するべき報告書や帳票類の総数を把握することができます。おそらく想像以上の種類と数の書類が作成されているはずです。

棚卸しの結果、作成する意味が無いことが明白な報告書や帳票類があるのであれば、管理職は速やかに作業を止めさせるべきです。個々の書類は作成に要する時間が短いことも多いため、その数は増加しやすい傾向にあります。各部署の管理者は報告書や帳票類などの書類関連はどのようなものが作成されているのか日常的に管理し、必要な報告書や帳票類以外は作成しないように心掛け、スタッフに無駄な作業をさせないことが重要です。

2.「目的」を明確にして「行動」につなげているか

各部署で作成されている報告書や帳票類の目的を明確にすることが重要です。各部署で作成されている報告書や帳票類は本来何か目的があるはずです。例えば、各診療科や病棟における取扱患者数の報告のためや、設備機器関連であれば設備機器の正常・異常の監視報告のためなど、日常管理において何かしらの必要性があるからこそ報告書や帳票類が作成されているのです。

日常管理ではなく経営戦略上の管理に必要な場合もあるでしょう。例えば、内科の紹介率をさらに高めるという単年度の事業計画がある場合、月の内科の紹介率がどのような推移を示しているのか、計画通りに目標達成に進んでいるのかを経営層に報告するために作成している場合などです。

このように、書類を作成する場合は何のためにその書類を作成するのか「目的」を明確にして、定期的に現状との見直しをはかることが重要です。担当者に作成する目的を聞いてみると、「以前は必要だったけど、今はこの報告書にある値は管理していない。ずっと作成しているから今も行っています…」という回答をよく聞きます。このように「目的」が明確にされていないために意味無く作成され続けている書類は意外に多いものなのです。

また、帳票作成後の活用方法も確認する必要があります。報告書や帳票類によって把握した現状に対して「意思決定」を行い「次の行動」が執られているかが重要です。現状の「良い・悪い」を判断し、それぞれに対する行動が執られなければ報告の意味合いが全く無く、書類による報告が形骸化しているといえます。書類作成の目的はあるが行動が伴わないのであれば、作成を止めてみるということを検討しても良いといえます。

3.相応しい間隔で報告書や帳票類を作成しているか

書類には先ほど確認した「目的と行動」に相応しい作成するタイミングがあり、それらに合わせた間隔で作成することが重要です。例えば、経営状況を確認するために必要不可欠な損益計算書などは月末が過ぎれば速やかに作成し、経営層に報告する必要があります。経営状況が悪化した場合、経営者は直ちに意思決定を下して状況改善に向けた対応をしなければならないからです。2・3か月後に損益計算書の報告を受け、経営状況をチェックしていては手遅れなのです。

また、資金繰りが厳しく、資金ショートのリスクが常に存在している医療機関や介護施設においては、資金繰り状況の報告は日次で受ける必要があります。反対に運転資金が潤沢で安定した医療機関や介護施設は、日々の資金繰り状況の報告を受ける意味合いは無いといえます。このように、日次・週次・月次・年次など、報告書を作成する間隔は重要なポイントです。間隔が長すぎれば手遅れになる場合がありますが、逆に短すぎれば作成に時間をかける割に価値が少ない報告になってしまいます。組織の現状や報告書の目的を考え、それぞれに相応しい間隔で作成することが大切です。

今回のまとめ

今回は日々作成される報告書や帳票類を価値あるものにするために意識したいポイントについてお伝えしました。報告書や帳票類などの書類作成にはいくらかの作業時間が必要であるため、作成される書類には「価値」を持たせることが重要です。そのためには、無意味な報告書や帳票類の作成を止めたり、作成される書類には目的を持たせて価値ある行動につなげたり、作成する間隔も書類の目的や組織の状況に相応しいものにする必要があります。そうすることで、作成している報告書や帳票類がさらに価値あるものになるといえるでしょう。

経営者や管理職の行うべき仕事は「スタッフの無駄な作業を削減し、価値ある仕事を変えていく」ことです。業務に従事するスタッフは管理職の指示を受けて業務にあたるのですから、報告書などの作成を自らの判断で止める訳にはいきません。それらの意思決定は経営層や管理職が行うことなのです。医療機関や介護施設の経営層や管理職の皆さんは組織の付加価値を高めるために、日々作成している報告書や帳票類の役割をあらためて考える必要があるのではないでしょうか。