医療機関・介護施設としての地域における役割を確立しよう(医療と介護の経営ブログ#13)
あなたの医療機関や介護施設は、地域においてどのような役割を担っているのか把握できていますか。地域の医療・介護を取り巻く環境は常に変化しています。もしかすると、知らないうちに地域において自分達が担っていた役割が他の医療機関や介護施設に取って変わられているかもしれません。「ここ最近、利用者数が減少しているような気がする…」そう思うことがあるのなら、それは事実である可能性があります。
企業が事業を継続させるためには自分達が提供するサービスが顧客に選ばれ続ける必要があります。医療や介護においてもそれは同様であり、地域において事業を継続させるためには地域の医療・介護において何らかの役割を担う必要があります。そのためには、地域の医療・介護の環境の変化に対して自分達が持つ強みを活用できないかを考え、地域で求められているニーズに合わせた経営戦略を実行し続ける必要があります。今回は地域におけるあなたの医療機関・介護施設の役割を検討する上で重要なポイントをお伝えします。
自分達が提供しているサービス内容を把握する
自分達が利用者に対して提供しているサービスの内容としてどのようなものがあるのか、あらためて把握します。例えば、有する病床機能とその病床数や稼働率、診療科や勤務医の専門性、各診療科の疾患別患者数や手術・検査などの実施件数やアウトカムなどが該当します。
そして、各サービス内容が利用者に提供している具体的な内容・規模・実績などを把握します。この時、できるだけ一定期間の変化を数値で把握することが重要です。そうすることで、各サービスに対する変化の傾向を把握することができます。実績の変化は市場における「評価の変化」と受け止めることができます。
意図的に減少させている訳では無いにもかかわらず減少傾向にある場合は、利用者のニーズや地域の医療・介護の環境が変化している可能性があります。特に傾向が変化した時期が分かるのであれば、その時期に何らかの環境の変化があった可能性があります。その変化を速やかに把握するためにも「鍵」となる数値の変化は日々意識する必要があります。
地域の医療機関・介護施設の内容・規模・実績と比較する
自分達が提供しているサービスの内容・規模・実績を把握したら、地域の他の医療機関や介護施設も同様に確認します。多少の時間は必要かと思いますが地域における立ち位置を把握するためには必要なことです。ポイント1のように日常的に把握する必要はありませんが1年に1回程度は確認することをお勧めします。
他の医療機関や介護施設の状況を把握することで「他の消化器科を持つ医療機関と比較して専門的技術が充実している」など、地域の利用者に提供しているサービスに関して比較することができるため、地域における自分達の現在の立ち位置が明確になります。
自分達の現在の立ち位置が明確になれば、利用者や他の医療機関や介護施設との関係性が見えてきます。提供しているサービスが他の医療機関や介護施設と重なる部分は競合関係になりやすいといえます。また、利用者の立ち位置で考えると利用者側の選択肢が増えるため、提供されるサービスへの要求内容は高いものになります。このような場合、競合との違いを打ち出せる強みを持っているかどうかが重要になります。
一方、これとは反対に提供しているサービスが他の医療機関や介護施設と重ならない部分は連携関係になりやすいといえます。利用者の立ち位置では「地域におけるオンリーワン」の状態であるため、自分達が提供しているサービスが選ばれやすくなります。ただし、重ならないサービスについては利用者のニーズがあることが前提です。地域で必要とされていない内容で「オンリーワン」になっても利用者が増えることは考えにくいといえます。その意味でも地域で求められるニーズに合わせたサービスを提供することが重要です。
地域のシェアを増加させる意識が大切
自分達の医療機関や介護施設を利用してくれている人々はどのエリアの人々なのか、その人数は何人なのかを把握することが重要です。言い換えれば各エリアにおいてどの位のシェアを確保しているのかを意識することが大切です。
ビジネスモデルで考えると医療や介護は基本的には地域密着型モデルです。地域におけるシェア率が自分達の医療機関や介護施設の支持率と考えることができます。まずは局地的なナンバーワンで構いませんので、まずは1つの特定エリアのシェアナンバーワンを目指すことが重要です。そして少しずつシェアナンバーワンのエリアを拡大すればよいのです。
そのためには対象とするエリアからの利用者のニーズに耳を傾け、自分達が提供するサービスを利用者のニーズに合わせていく取り組みが必要となります。利用者の要望から考えられたサービスが本当に利用者を満足させるものであるかを検証し、結果に裏付けされたサービスを提供することがシェアナンバーワンを獲得するためには必要なことであるといえます。
今回のまとめ
今回は医療機関・介護施設としての地域における役割を確立するポイントについてお伝えしました。地域の医療・介護を取り巻く環境は目まぐるしく変化するため、事業を継続させるためにはその変化に合わせて、自分達のサービスを把握し、利用者のニーズや地域の医療・介護の環境が変化に対応できているか日々確認することが重要です。また、同じ地域における他の医療機関や介護施設との提供サービスの比較を定期的に行い、関係性を把握しておくことも重要なポイントになります。
地域におけるシェアナンバーワンになるためには対象とする地域の利用者が持つニーズに合わせたサービスの提供が必要です。利用者の声に耳を傾け、医療機関・介護施設としてどのようなサービスを提供すべきかを考え続けることがこれからの医療機関や介護施設の経営には必須であるといえます。