人材を育成する4つのポイント(医療と介護の経営ブログ#04)

医療機関・介護施設の経営者として「人材が育ってくれない」という悩みがあります。「入職1年目には入職者研修は行っているし、3年目・5年目という節目に研修をさせているけれども、なかなか人材が育たない…」と考える経営者が見えます。しかし、そう考えている経営者自身は「こんな人材が欲しい」というものがはっきりと見えているのでしょうか。「求める人材」が明確に見えていない状態で欲しい人材は育ちません。事業を成長させるためにはスタッフの成長が必要です。しかし、断片的な教育ではスタッフは成長しません。人材育成は組織として計画的に長期的に継続して行う必要があります。そしてその過程においては4つのポイントを押さえることが大切です。

医療機関・介護施設の各部門において「求める人材」を明確にする

まずは、医療機関・介護施設において「求める人材」を明確にする必要があります。また、その際には将来に向けての中長期的な経営戦略に基づきながら明確にすることが重要です。そして、経営戦略に基づいて各部門における経営戦略が構築されている場合は、その部門ごとにさらに具体的な「求める人材」を明確にすることができます。診療部門・看護部門・放射線部門・臨床検査部門・事務部門など各部門で必要な知識やスキルは異なるものです。それぞれの部門に求められる知識やスキルは何であるのかをまずは明確にしておく必要があります。

「求める人材」に基づいて「教育計画」を策定する

「求める人材」が明確になれば「教育計画」を策定します。「求める人材」に基づくと「不足している知識やスキル」は何でしょうか。効果的な人材教育を行うためにはスタッフの現状把握することが大切です。何が原因で「求める人材」になっていないのか、その阻害要因を明確にしてそれを解消させるための教育や経験を与える教育計画を策定します。求める人材を作り上げるには段階的な教育を与えることが必要であり、スタッフのキャリアにおいてふさわしい教育があります。例えば入職1年目のスタッフが医療・介護に関する業務を熟知している入職後10年以上のスタッフを対象とした教育を受けた場合、内容が理解できず意味のない教育になってしまいます。無計画に闇雲にスタッフに対して研修やセミナーを受講させるのではなく、受講させる裏付けのある教育をふさわしいタイミングで段階的に与えることが大切です。

「教育計画」に基づいた教育を受ける機会や支援を与える

教育計画を策定しても「あなたにはこの計画に沿って成長してもらいたい」といって各スタッフの自主性にお任せでは都合良くその通りに成長するということはありません。組織としてスタッフに習得してもらいたい知識・スキル・経験などを受ける機会や支援を与えることが必要です。知識習得のために必要な研修や勉強会を受けるチャンスや、スキルや経験を習得するための場の提供や部署異動、資格取得のための金銭や時間の支援など必要に応じたバックアップが必要です。「仕事に関する知識やスキルは習得して欲しい。でも自主的に頑張れ」ではスタッフのモチベーションは間違いなく下がります。組織の教育計画を進めるためのスタッフの取り組みに対して成長するための機会や支援を行う姿勢が重要です。

スタッフの到達度を把握し評価する

組織における「求める人材」への達成度を把握することは、教育計画を進める上で重要なポイントのひとつです。各スタッフのキャリア形成の進捗が計画通りに進んでいるかは将来の経営戦略に大きな影響を与える場合もあるからです。例えば、管理職を育成するために必要な教育計画を構築したにも関わらず、計画通りにその教育が進まなかった場合、管理能力を持つスタッフが増えないわけですから、管理者不足に陥ってしまうリスクを抱えることになります。その結果、管理者が不足した場合に数合わせの昇進が行われ、管理者としての十分な能力を有しないスタッフが管理職になってしまうという結果になるケースもあります。そのため、スタッフの能力や経験の蓄積が計画通りに進んでいるか管理し、目標達成のための取り組みを適宜行うことは重要であるといえます。

また、教育計画に関する各スタッフの評価も行う必要があります。ひとつは「組織が求める人材を目指そうとする積極的な姿勢」を評価するプロセス評価、もうひとつは「教育計画によって期待する成果を出している点」を評価するアウトプット評価になります。どちらの評価に比重を傾けるなどは各組織によって異なりますが、プロセスとアウトプットのふたつの視点で評価を行うことが必要といえます。各スタッフにおける評価を行うためにも教育計画を明確に構築し、目に見える形で達成度を確認できるような教育制度を検討・構築することが必要です。

今回のまとめ

このように、人材育成は医療機関・介護施設の経営戦略に密接な関係にあるといえます。そのため、組織の人事部は人材育成を各部門に任せきりではなく、組織全体の各部門において適切な育成が行われているか管理することが重要です。各部門の「求める人材」を明確にする支援を行い「教育計画」を取りまとめ、組織として教育を受ける機会や支援を行い、各スタッフの教育計画の到達度を人事評価に組み込む制度を構築するなど、人事部が検討・提案する意義は非常に大きなものがあるといえます。これからの医療機関・介護施設の成長には人の成長が不可欠です。スタッフを計画的に成長させることが事業の成長にもつながるという仕組み作りが今後さらに必要になってくるといえます。