医業収益を左右する!診療報酬算定に関する3つのスキルチェック(医療と介護の経営ブログ#05)

あなたの医療機関には診療報酬に基づく会計入力を行い、レセプトの作成・請求を行うスタッフがいると思います。診療所やクリニックの中には、医療事務ではなく医師や看護師のスタッフが行っている場合もあると思いますが、多くの医療機関では医療事務のスタッフが診療終了後に診療報酬のルールに従い会計を入力し、審査機関へレセプト申請を行っているのではないでしょうか。

レセプトデータは日々の診療会計の積み重ねであるため、外来では診療の終了時に、入院中の場合は月末までに、退院時には退院までに全ての会計データが正しく入力されている必要があります。会計データの入力が完璧に行われているのであれば、レセプト提出期限までのチェックの作業はゼロになるはずです。しかし、レセプトの中には会計算定誤りや会計入力忘れがあるため、内容の確認業務が発生してしまうのです。いわば月末のレセプトチェックは診療報酬請求を正しく行うために必要な業務であるといえます。そのように考えると医療行為に合致した正しいレセプトを請求するためには、やはり日々の診療会計入力の精度の高さが必要なのです。医療機関の医業収益は診療算定を行うスタッフのスキルに影響を受けているといっても過言ではないのです。

診療会計にはスピードが求められます。特に外来会計については利用者を会計に長時間待たせるとサービス低下につながるため、正しい診療会計を速やかに入力する必要があります。現在はオーダーリングシステムが発達しているため、電子カルテからあらゆる診療報酬データが医事システムに取り込まれます。しかし理由は様々ですが、実際には医事システムに誤った診療報酬データが取り込まれたり、算定すべき診療報酬データがオーダー連携されていなかったりする場合があるのです。

これらによる診療報酬算定の誤りを食い止める最後の防波堤を務めるのが医療事務スタッフなのです。しかし、医療事務スタッフのスキルが十分でなければ、この役割を果たせないことになってしまうのです。ではどんなスキルが必要なのか。まずは次の3つのポイントで医療事務スタッフがどのくらいのスキルを持っているかチェックしてみることです。

スキルチェック1:診療内容を理解・確認している

その日にどのような診療が行われたのかカルテから理解できなくては正しい診療会計の算定はできません。医事システムに誤ったオーダーが取り込まれたとしても真偽の判断ができないためです。自らカルテを確認し、その日に行われた診療の全容を把握し、診療会計の「完成形」をイメージする必要があるのです。オーダー連携の中には臨床スタッフが医事システムに取り込ませるために診療行為を選択する場合があり、誤った診療行為が選択されることもあります。そのため正しい診療報酬項目が取り込まれない場合があることを想定しなければいけません。そしてその際には取り込まれたデータを正しい内容に自ら修正する必要があり、実践するためには医師の診療記載、検査内容や実施事項、入院においてはサマリや手術記録、看護記録、熱計表等々、一通りのカルテ内容を理解できるスキルを持つ必要があります。また、ある程度の医学用語を理解していることも必要ですし、よくある疾患についての基礎的な知識を持ち、治療経過を時系列でイメージできるスキルも必要です。

スキルチェック2:診療報酬の算定条件を理解している

診療報酬は2年ごとに改定が行われますが、その際には既存の診療報酬の算定条件の見直しや新たな診療報酬の追加などが行われます。そして、診療報酬の会計入力時にはこれらの改定内容を理解していることが必要です。特に指導料や診療報酬に付随する加算関連は算定忘れになりやすい項目で特に注意が必要です。また、手術手技の算定誤りや算定忘れは医業収益に大きな影響を与えます。手術記録をしっかりと確認し、診療報酬のどの手術手技に該当するのか正しく判断できるスキルが必要です。

また、各診療行為がどの時間帯に行われたのかを確認し、時間外加算を必ず算定することも重要です。多くの臨床スタッフは診療報酬の仕組みを十分理解していません。医療事務スタッフが診療報酬の仕組みを理解し、臨床スタッフが取り組んだ医療行為をしっかりと医業収益に反映させることが大切です。

スキルチェック3:DPCを理解している

DPCは入院の医業収益の根幹を成すものです。医療資源を最も投入した疾患に基づいて選択される診断群分類によって入院期間中の診療報酬点数が決定されるため、疾患の正確な選択はアップコーディングやダウンコーディングを防ぎ、正しい診療報酬請求につながります。医療資源を最も投入した疾患は主治医の判断に拠るものですが、その判断が誤ったものになることを防ぐために、主治医が選択した診断群分類が妥当かどうかチェックする必要があります。

また、DPCには主治医以外にも看護師が判断して登録する箇所が存在します。医療事務スタッフはそれらの登録忘れや登録誤りが無いか総合的にチェックし、修正が必要と判断した場合は主治医や看護師にその対応を求めるためのスキルが必要です。そのためにはDPCの仕組みやICD10コードを理解している必要があります。正しいDPCデータの登録は医療機関の医業収益に大きな影響を与えるのです。

今回のまとめ

このように、診療会計に携わる医療事務スタッフは医療機関の医業収益に大きな影響を与えます。診療後にカルテに基づいて診療報酬を速やかに正しく算定するためには様々なスキルが要求されるのです。診療報酬算定に関するシステムは年々高度化が進んでいますが、医療事務スタッフのスキルはどうでしょうか。医療事務スタッフのスキルが上がらなければシステムの高度化が進んでもそのシステムによる診療報酬算定の結果の正否が判断できません。

今回の3つのスキルチェックに基づいて医療事務スタッフが実務においてどの程度のスキルを持っているのか確認されてはいかがでしょうか。そして、医療事務スタッフのスキルが不十分であるとの結果が出た場合は、医学や診療報酬やDPCに関する勉強会や、専門家による教育などを継続的に行うことが必要だといえます。