3つの目的に費用を分類して利益を高める方法(医療と介護の経営ブログ#03)

医療・介護などの本事業によって利益を生み出し続けることは、将来に向かって組織を成長させるために必要な条件のひとつです。1年~2年レベルの赤字はまだしも、3年以上連続しての営業損失や経常損失となると、利益を生み出せない体質が恒常化していると考えられ、現在のビジネスモデルを抜本的に見直す必要があるといえます。そのような状態になる前に安定的な事業の継続を目指し、利益体質の改善に向けた取り組みを日々続けることが重要です。

シンプルに考えると「利益=売上-費用」ですので、利益を高めるためには「売上を増やす」か「費用を減らす」ための取り組みを行えば良いわけです。しかし、利用者がいなければ売上を増やすことができないことは明らかです。医療・介護サービスを受けるか否かの意思決定権が利用者にある以上、医療機関や介護施設では売上を増やすための取り組みとその実現には限界があります。一方、「費用を減らす」ことはどうでしょうか。費用は売上獲得のために消費する金銭であり、「消費する」という意思決定は組織で決めることができます。また、売上を増やす取り組みと比較すると対策実施までの時間も短く、利益に与える効果も比較的早く現れます。

「各部門における費用にムダが多いと感じる」

「各診療科の医業収益は多いのに利益が少ない」

「いつの間にか運転資金が減少して借入金が増加しつつある」

「事業維持に精一杯で利益を獲得できず、成長に向けた取り組みができない」

このように感じている医療機関や介護施設の経営者は、費用を発生させる「目的」を明確にして意思決定を行うことが重要になります。その際には「投資・消費・浪費」という「3つの目的」に分けてみます。そして、それぞれの目的に対する意思決定の方針に従って判断することでムダな費用を抑制させることができます。「投資・消費・浪費」の分類は具体的に次のように考えます。

「投資」…将来の成長につながるもの

「投資」に分類されるものは将来の成長につながるものであり、具体的な例として、高額な手術機器、放射線機器、臨床検査機器、建物の新築・改築、電子カルテの導入や更新が挙げられ、投資規模が数百万円~数億円単位に及ぶ高額なものが多く、投資額の回収には複数年の期間が必要になります。一方で投資額の支払いは短期間で行われる場合がほとんどであることから、その投資の実施は慎重かつ計画的に判断する必要があります。

実際の経営において投資案件は複数に及ぶ場合が多いことから、個々の投資案件をQCD(効果額・投資額・投資額回収期間)で評価し、投資の優先順位を見極めて実行する必要があります。これらの優先順位を見極めるには、投資による収益増加額、初期投資額、運用にかかる費用計上、調達計画や返済計画、運転資金の計画など様々な見通しを適正に評価する専門的な知識やスキルが必要となります。

評価の誤りとしてありがちなのは、機器を導入したいために根拠もなく期待収益を大きく見積もる一方で、運転費用を少額に見積もってしまうことで投資額の回収が一向に進まないケースです。たったひとつの無計画な投資が医療機関や介護施設の将来の成長に向けた計画実行のボトルネックにならないために、投資判断については経営の専門家の知識やスキルを活用しながら冷静に判断したいものです。

「消費」…日々の事業運営を維持させるために必要なもの

「消費」に分類されるものは日々の事業運営を維持させるために必要なものであり、具体的な例として、薬剤や特定保険医療材料、衛生材料、院内に設置されるパソコンや通信機器、文具類などの消耗品が挙げられます。「消費」に該当するものは日常的に発生する費用であり、毎月の金額は小規模でも年間に換算すると高額になる場合があります。そのため、金額規模が大きい項目から順に費用の削減を行うと利益の向上につながる場合があります。ここで注意したいのは費用の削減が利用者へのサービス低下に影響を与えないことです。利用者あっての売上であり、売上あっての利益であるため、利用者の満足度を低下させてしまう費用削減は避ける必要があります。

「浪費」…投資・消費に分類されないもの

「浪費」に分類されるものは投資・消費に分類されないものであり、利益を高めるために必要とされない費用です。具体的な例として、高額な応接セットや置物、絵画などの美術品、過剰な接待などが挙げられます。「浪費」はいうまでもなく無駄遣いであり、即刻止める必要があります。「浪費」の費用は比較的高額である場合が多く、同時に日常業務にも影響を及ぼさないため、最優先に取り組むことで利益を効果的に生み出すことが期待できます。

このように費用の目的を「投資・消費・浪費」に明確に分類し、その費用の実行の意思決定を判断することで費用を抑制し、利益につなげることができます。また、この考え方は年度予算を作成する際にも活用できます。事業年度の開始前に費用の用途目的を意識しながら予算を構築することで利益を計画的に確保することができます。一方で、投資計画の優先順位や評価には高度な知識やスキルが必要である場合もあるため、費用の見極めには経営の専門家のアドバイスを活用することも効果的といえます。