業務のスリム化に取り組もう!業務の改善ステップ【その1:業務評価編】(医療と介護の経営ブログ#09)
あなたが勤務する医療機関や介護施設の組織では、各部門における業務の棚卸は定期的に行われていますか。業務上のアクシデントやインシデント、診療報酬や介護報酬の改定、患者満足度調査など、何らかの出来事が発生するたびに新しい作業が増加し、いつの間にか日々の業務が煩雑になっている経験が誰しもあるのではないでしょうか。
日常業務の業務負荷の軽減のためにシステムを導入する話をよく聞きます。スタッフが行っている作業をシステムに置き換えることでスタッフの工数を削減し、オペレーション能力の向上、新たな付加価値を生み出す取り組み、残業時間の削減などのメリットを期待するわけです。しかし、「システム導入にかかるプロジェクトのために、通常業務に加えて多大な業務時間が増えてしまった」「システム導入したら、今までに無い新しい作業が増えて工数が削減できるどころか増えてしまった」「慣れないシステムのため、エラー件数が増えてしまった」など、システム導入に関するデメリットが発生することも理解しておく必要があります。
たしかに新たなシステムを導入することは、スタッフの単純作業を削減し、付加価値の高い仕事へ移行させる手段の一つであることは間違いありません。しかし、前回のコラム(医療・介護の経営コラム #08:https://wellside-consulting.jp/archives/1753)でお伝えしたようにシステムなどの設備投資は多額のキャッシュの動きを発生させてしまうため、その投資判断は慎重に行う必要があります。もし設備投資を行う意思決定を行うのであれば、投資効果を確実に出すために現在の業務を把握と見直しを行い、新たなシステムのロジックにしっかりと反映させる必要があります。
本来、業務の把握と見直しはシステム導入時などのイベントに合わせて行われるものではなく、管理職の下で日常的に現場スタッフにおいて行われていることが理想です。しかし「管理職がどのような業務が行われているか把握していない」「業務改善の方法や効果がわからない」など、実際の現場では日常的に業務改善が行われていない場合が多く見られます。今回は各部門における業務改善のステップの基本的な考え方についてお伝えしたいと思います。
まずは業務を洗い出すことから始める
システム導入を行う場合、初めにスタッフが日々どのような業務を行っているのかを把握する必要があります。これは日常業務だけではなく週単位・月単位・年単位で行っている業務も洗い出すことが必要です。ここで細かく洗い出しがされないと、システム導入後も業務が手作業のまま残ってしまったという結果になりかねません。しかし、ある日管理者から「業務の洗い出しをするように」といわれてもスタッフは業務の全てを抽出することは難しいと思います。そのため管理者は日々どのような業務が行われているのかを管理しておくことが重要だといえます。
それぞれの業務の価値を評価する
次に個々の業務の評価を行うことが必要です。その業務を今後も継続する必要があるのか、それとも止めてしまっても問題はないのかを判断します。例えば毎月データを抽出して集計報告書を作成して別部門に提出する業務があったとします。提出を受けた部門にその後どのように報告書を活用しているか確認すると「活用はしていないが念のために出力してもらっている。受け取った後はファイル保管している。保管後に必要となったことはない」といったことが実際にあるのです。このように作業時間やキャッシュ(インプット)に対して付加価値(アウトプット)が無いまたは少ない業務は止めるという判断が必要です。完全に止めることに抵抗がある場合は「ひとまず止めてみる」という判断でも良いのです。その後の検証で「必要な業務」と判断されれば再開すれば良いのです。「今まで行われてきた業務だから止められない」という根拠が無い理由で業務を継続するのは避けるべきです。
価値のある業務はパフォーマンスを高める
業務の評価の結果、付加価値が認められる業務については継続する必要があります。だからといって現状の業務の手順で続ければ良いというわけではありません。経営資源は有限です。各部門の管理職はスタッフという経営資源を効果的に活用する責務があります。各業務がどのくらいの経営資源を使用しているのか把握し、今以上にスタッフのパフォーマンスを高める取り組みが必要です。「パフォーマンスを高める」ためには「アウトプットを高めること」もしくは「インプットを減らすこと」を行えば良いわけです。今回はシステム化に比較的に関係が深いと思われる「インプットを減らすこと」について焦点を絞りたいと思います。
業務の流れを見直す
業務にかかる工数やキャッシュなどのインプットを減らすためには、業務のどのプロセスにインプットが費やされているのかを把握する必要があります。そのためにはその業務がどのような流れで行われているのかを可視化することが重要です。業務の流れを可視化することで各プロセスにおいてどのような改善の施策があるか検討することが可能になると同時に、改善効果がどのくらい期待できるかを把握することができます。
今回のまとめ
今回は「業務評価編」として業務管理についてお伝えしました。医療機関や介護施設では利用者の満足度の向上、施設基準の算定条件の維持などに向けた様々な取り組みが日々検討され、新たな業務として行われています。しかし、一方で各部門において業務の把握や見直しを行わなければ、実施すべき業務数を増加させてしまう結果となり、結果的に残業量・人員数・職場内ストレス・退職者などの増加や、業務の質の低下などのリスクにつながります。そのような状況に陥らないためにも、各部門において業務の洗い出しと評価、業務プロセスの見直しを継続的に行うことが重要です。あなたの医療機関や介護施設において業務管理が上手く行われていないのであれば、今後、慢性的な人手不足や働き方改革が推進される社会において、組織の仕組みとして取り入れる必要があるのではないでしょうか。次回は業務プロセスにおける改善施策の考え方についてお伝えします。